未払い残業代請求に対して使用者がすべき予防とは |

未払い残業代請求に対して使用者がすべき予防とは

未払い残業代請求への予防

 昨今、未払い残業代請求の件数が急激に増えています。サービス残業は論外として、最近では、「みなし残業代」のような、残業をしなくても、一定の賃金が固定的に支給されるなどにより、適正な労働時間の管理が行われていない事例が数多くあります。

 未払い残業代請求をされる前に使用者がすべきことは何か?

1.労働時間の記録の保存

 労働基準法第109条に基づき、労働時間の記録に関する書類については、3年間保存する義務があります。具体的には、以下のようなものを保存することが重要です。

①.使用者が自ら始業・終業時刻の記録
②.タイムカード、ICカード等の記録、残業命令書およびその報告書

③.労働者が自ら労働時間を記録した報告書など

 もっとも、タイムカードによる労働時間の把握には、不正打刻という問題があるため、注意が必要です。せっかく労働時間の記録に関する書類を保存していても、労働時間とタイムカードの打刻時間が一致していなければ意味がありません。

 また、訴訟における事実認定では、タイムカードの打刻時刻が労働時間であるという事実上の推定が働きます。

 そこで、使用者としては、タイムカードの打刻時間と労働時間とが可能な限り一致するように対策を取ることが重要です。例えば、タイムカードの打刻について、実労働時間と一致させるよう労働に十分な指導をするとともに、不正打刻や打刻忘れに対して、懲戒処分にするなどの運用も考えられます。

 八戸鋼業事件(最高裁第一小法廷判決 昭和42年3月2日)は、会社が不正打刻については、解雇をもって臨む旨を労働者に周知していたにも関わらず、労働者がこれを知りながら無視して不正打刻をしたため、懲戒解雇としたことから、当該労働者が懲戒解雇の無効を求めたとういものです。

 最高裁は、懲戒解雇を無効とした原判決を破棄差戻しとし、タイムカードの不正打刻に対して厳しい姿勢を示しました。
※ 上記判決は、不正打刻に関するもので特殊なケースであるため、懲戒解雇を検討するに際しては、慎重に行うべきです。

2.裁判になった場合

 裁判における労働時間に関する証拠としては、前述のとおりタイムカードが重要になります。他にも、業務日誌、業務日報、残業時間に送ったメール、FAXなども証拠として認められます。また、パソコンの起動した時刻やシャットダウンした時刻を基に残業時間を推定することもあります。

 こうした証拠によって、労働者が主張する残業時間がすべて認められてしまうような事態を避けるためにも、使用者としては、労働者に対して指示した残業命令書やその報告書など、当該労働者が主張する残業時間は存在しないことを立証する証拠を準備しておく必要があります。
※ 労働時間の管理を怠っている会社は、裁判では非常に苦しい立場に追い込まれることになります。

 なお、裁判において、労働者の残業時間の主張に対し、会社がなんの根拠もなく否認するのではなく、事実の下、否認することが重要です。例えば、当該労働者の途中休憩の有無や、残業の必要性もないのに意味なく職場に居続けるなどに対して、本人への尋問や同僚の陳述書、パソコンの閲覧履歴といった証拠を確保し、立証していく必要があります。

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