未払い残業代が請求された場合に起こりうるリスクとは

未払い残業代請求

 これまで定額残業代などを導入する企業にとって、定額部分の残業時間が定められていない場合や、固定的賃金と定額残業代が明確に区別できていない場合、未払い残業代が請求される恐れがあります。

 過去の判例では、定額残業代と認められなかった場合、この部分も固定的賃金としてみられるため、残業代をまったく支払っていないものと取り扱わられ、改めて残業を支払わなければなりません。

 仮に職員が未払い残業代を請求し、それが事実だった場合、賃金の時効が2年間であることから、過去2年間に遡って支払わなければならず、しかも請求した職員1人にのみ支払うのではなく、過去にさかのぼって未払い残業代が発生している職員全てに支払わなければならないため、とても大変な作業となります。

 ここでは、未払い残業代を支払う際に必要な、各行政への手続きについて記します。

1.年末調整のやり直し

 未払い残業代は、給与所得であるため、実際に給与が確定した時期に支払わなければならないものであることから、過去2年間に年末調整が行われているのであれば、その年々の年末調整のやり直しが必要になります。

 その年によって所得税額が変わることや、復興特別所得税もあることから、遡って計算をし直すのは、かなりの労力が必要です。

 そして、本来の源泉所得税額を算出した上で、その年の源泉徴収票を提出しなければなりません。

2.各市区町村へ給与支払報告書の再提出

 年末調整のやり直しをすると、住民税額が変わる場合もあることから、毎年1月に各市区町村へ提出している、給与支払報告書の再提出も必要になります。

 その年の1月1日現在の住所または居所へ提出する必要があり、過去2年間に転居などにより異動している場合、その当時の住民税が発生している市区町村へ再提出する必要があります。この作業も該当する社員が多く入ればいるほど、大変な時間とコストがかかります。

3.労働保険料の再確定申告

 労働保険料は年度単位(4月1日~翌年3月31日)に確定した賃金を基に、労災保険料率、雇用保険料率を乗じて年間の保険料を納めることから、未払い残業代も、遡ってその当時の各料率を乗じて算出し、再確定申告をする必要があります。

 事業所ごとに保険関係が成立されているため、継続事業一括の届出をしていない場合には、事業所毎に所属している職員を洗い出し、足りない分の労働保険料を各都道府県労働局に納めなければなりません。

4.社会保険料の算定基礎届の修正申告

 未払い残業代は、本来その時期に発生している報酬となるため、過去2年間の算定基礎届の対象時期に、未払い残業代が発生しているのであれば、この2年分の算定基礎届の修正申告をしなければなりません。

 その結果、当時の社会保険料額と修正申告した後の社会保険料額が変わる場合もあるため、該当する社員すべての対象となる月の保険料を遡って変更しなければならなくなります。

 1~4までの手続きを踏まえ、その当時、実際にかかっている税金や法定福利費を、本来支払わなければならない賃金から差し引いた上で、未払い分を支払う必要があります。しかも、該当する全ての職員に行わなければならないため、通常業務に、この作業が発生した場合、企業側にとっても多大なリスクが生じさせることになります。

 不要なリスクを未然に防ぐためにも、法令遵守に取り組み、良好な労使コミュニケーションを築くことが企業安定の近道であるとも言えます。

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